『空手バカ一代の研究』著者 木村修氏に聞く!
『空手バカ一代の研究』を中心に、梶原漫画から格闘技、戦争まで語りつくした!
木村 修(きむら おさむ)
編集者。1961年生まれ。明治大学文学部卒。著書には『最強格闘技の読み方』『「空手バカ一代」の研究』『武道的身体のつくり方』などがある。また、企画・編集したムックには『格闘技マンガ最強伝説』『正義とは何か?』『ムエタイの本』『格闘ボディのつくり方』『別冊宝島317ほしい体が手に入る本』などがある。短期間、中国拳法を学んだ後、キックボクシングを始め、1996年、マーシャルアーツ日本キックボクシング連盟プロライセンスを取得。2003年から1年半、伊藤式胴体力を学ぶ。2009年からはブラジリアン柔術も修行し、青帯。
聞き手 川保天骨
今回ご登場いただく木村修氏は私を格闘技マスコミの世界に引っ張り込んだ張本人である。その件は文中に書いてあるので読んでいただくとして、氏の著書『空手バカ一代の研究』の話を中心に、梶原漫画から格闘技、戦争まで語りつくした!
※本記事は「ドラゴン魂 創刊号」に掲載されたものをWEB用に再編集したものとなっております。
空手最大の秘技!三角とびを一生懸命練習する人が大量発生!
川保
あのですね、私が格闘技の雑誌に携わるきっかけを作ったのは木村さんなんですよ。K-1が始まるちょっと前なんですけど、『BONNOU』(英知出版)という本でアンディ・フグのセミナーを撮影してたんですよ。そしたら「君、大道塾の多田君(川保の本名)でしょ。写真撮るんだ~。うちでも撮ってよ」って言われたんですよ。それから山田英司編集長に紹介された「選手なのに写真撮るの?」って言われて、「僕カメラマンになりたいんです」って。それからですね.。あの当時は格闘技雑誌いっぱい出てましたね。
木村
泡沫雑誌も色々あったね。
川保
そういう流れがあって、今こうして会ってるのも不思議な縁ですね……。それでいきなりですが、何でこの『空手バカ一代の研究』※1という本を書くことになったんですか?
※1 『空手バカ一代』の研究
発行元 アスペクト 発売日1997年6月
現在は残念ながら絶版になってますが、現時点でアマゾンでは手に入れる事が出来ますよ!
木村
福昌堂時代に漫画関連の本をいくつかやってたんですよ。
直接のきっかけは知り合いの編集者が『新世紀エヴァンゲリオンの謎』という本を企画して、その一部を執筆したことですね。この本がなんとその年の新書のベストセラーになった。謎本は受けるんだな、と思ったんです。しかし、『空手バカ一代』の場合、「実話」だったので、マンガのモデルとなった登場人物や、エピソードが実際はどのようなものであったかを「研究」する本になった。
『格闘漫画最強伝説』とか『正義とは何か』とか。小林よしのり先生とか永井豪先生とかに話を聞いている本。
川保
元々、漫画に詳しいというか、そういうことはあったんですか?
木村
そこそこ普通レベルですよ。昔はみんな電車では漫画読んでましたよね。今はみんなスマホになってるけど、僕は特にオタクではないんだけど、漫画ネタは面白いなと思っていた。
K-1が始まる前は石井館長が色々仕掛けていて『格闘技オリンピック』などをやったりしてたんだけど、『格闘技オリンピック』というイベントは、梶原一騎の漫画の中で観たことあるんです。僕からすると漫画が先にあって、それを現実が追っているというような感覚があったんですよ。『四角いジャングル』なんかもそうです。
川保
現実と漫画がシンクロしたりする現象は、梶原一騎の作り出した世界から大々的に始まったような感がしますね。実際にはその前にもあったとは思いますが。
木村
漫画が現実化するということでは梶原一騎の影響が大きいですね。『空手バカ一代』その前にも『キックの鬼』もあったし……。いわゆる、実話漫画ですね。
天骨
中学生の時『空手バカ一代』初めて手にした時、最初の1ページ目開けたら『これは事実談であり、この男は実在する』※3という冒頭部は衝撃的でした。
※3 これが『空手バカ一代』の冒頭部分に出てくる象徴的な見開きページ。
この一文によってこの『空手バカ一代』の奇跡が幕開けだ!
木村
『空手バカ一代』は、僕が小学生の時に始まった漫画なんだけど、第1回は散髪屋で見たのかな。子供だから買うお金が無いから漫画はすべて散髪屋です(笑)。それで物凄く衝撃を受けた。空手が悪者じゃないといことに。
それまでは黒澤明監督の『姿三四郎』『続・姿三四郎』とかで空手が悪者として出てくる。ああいうイメージ持っていた。その頃、空手は格闘技というより超能力に近いようなイメージで描かれていたんですよ。『続・姿三四郎』では見てると空手の技なんかほとんど出てこない。オドロオドロしい気合ばかり。「キエー!」とか言ってものすごく遅い手刀打ちなのに、当たったら木がバキバキ倒れちゃう。凄い神秘的なイメージがあったけど悪者です。
それが『空手バカ一代』では凄いヒーローなんですよね。とにかく『四角いジャングル』、『空手地獄変』とかね。散髪屋行く度にバラバラに読んでると、どれがどれだか分らなくなってくる(笑)。どれが『空手バカ一代』の話だったのかっていうことを含めて結構ごちゃ混ぜになってたんですね。
川保
散髪屋、相当頻繁に行きますね(笑)。
木村
月1回だけど、一時間ぐらい待つでしょ。梶原一騎の作品はなぜか必ず読んでいた。
川保
梶原一騎の作品には『あしたのジョー』とか『タイガーマスク』とかあるじゃないですか。その中で『空手バカ一代』は実話が入ってて、そこがまた現実とゴッチャに…。
木村
実話だけど、事実と違うんだよ(笑)。『空手最大の秘儀 三角とび』というのがあって、『三角とび』は実際に使っている人がいるわけじゃなくて、梶原一騎の創作に近いんだけど、その後、添野師範が作中で使ったり『悪役ブルース』の中にも出てきたりして「これはタイに行った時、古代中国拳法の達人に習った」と書いてあるんですよ。子供は作者がそういうんだから、そうなんだなって思っちゃいますよね。
川保
私も『三角とび』やってましたからね。休み時間とかに友達を蹴ってた(笑)。
木村
『格闘技漫画最強伝説』に記事を書いてくれた林君というライターもやっぱり練習してた(笑)。
川保
それも漫画が現実に影響を与えてやらせているという(笑)。
木村
僕自身は、関西にいたからかもしれないけど、極真信者みたいな感じにはあまりなったことなくて。どちらかというとブルース・リーとか沢村忠の影響が強かったね。
川保
やっぱり最初のインパクトにキックボクシングがあったんですね。
木村
キック、何に驚いたかというとハイキックですよね。足で顔を蹴るなんて全然想像できなかった。子供にとってはすごいインパクトだったんですよ。
川保
この前、添野先生と話してたんですが、それまでの空手の蹴りは直線的な蹴りが多くて、タイとかの鞭で打つような蹴りはタイと交流してから初めて入ってきたって。
木村
昭和38年、黒崎健時先生と中村忠師範と藤平昭雄(大沢昇)さんがタイに行って、実際に戦ってきて取り入れたんですね。それまではタイ式みたいな蹴りはなかったはず。
川保
木村さんは『空手バカ一代の研究』を書いてるんで、極真信者かと思ったらそうでもないんですね?
木村
そうですね(笑)。ただね、同世代だと、極真信者じゃなくても、影響受けてない人はいませんから。今の影響の受け方と違うから、全部鵜呑みにするから(笑)。
川保
今って細かいコンテンツ……、作品が細分化してるじゃないですか。ユーザーの嗜好とか。あの時代は『空手バカ一代』っていうのがあれば皆が読んでるってことですからね。インターネットがないって、逆にすごいことですね!
木村
漫画の影響力は凄かったですよね。大山倍達先生が原作者に名前を連ねているものも沢山あった。「そんな大げさな!」って思う部分もあったけど、「いや、こんなことが確かにあった」とか(笑)。それも多分、梶原先生が勝手に書いてるのかもしれない。そんな談話が入るから、まさか嘘と思わない(笑)。
川保
子供は純真なんで、そのまま入っちゃうんですよね。それは良い面もあるし、勘違いして誇大妄想的な感じになる人もいるだろうし。今みたいに情報化社会にドップリ浸かってる子供はどうか分らないけど。昭和世代はすぐやっちゃおうって子が多かったんじゃないですかね。
空手バカ一代読んで空手始める人大量発生!
川保
この『空手バカ一代の研究』は木村さんが『フルコンタクトKARATE』とかの編集で格闘技に携わってきたから書けたと思うんですね。単なる漫画好きの人は書けないですよ。知識とか人脈、武道の流れを押さえてるし。私みたいに実際に『空手バカ一代』によって空手を始めた人間からすると、「そうだ、そうだ」っていう部分がたくさんある。『空手バカ一代』読んで空手始めた人ってどれぐらいいるんでしょうね? 当時はものすごい影響を若者に与えていたって、東先生が言ってましたよ。
大山倍達ピンチの描写は凄まじいの一言。
画中に大山倍達本人の独白という形態で文章が載る。まさに実話漫画!
大迫力の牛との戦い。角がポーンと飛ぶ! 照りつける太陽!
この画の構図はまさに芸術の域! 青年たちの心を鷲掴みした!
木村
東先生がそうおっしゃっていたのならうれしいですね。東先生なんかは僕からしたら結構登場してるようなイメージがあったけど、改めて読みなおして見ると2、3コマ程度。『四角いジャングル』の方がたくさん出ているんですね。僕らの関西の方では極真の道場はあまりなかった。関西は剛柔流とか伝統空手が強くて、結構少林寺拳法も多かった。
川保
私も道場探したんですが北九州はその頃どこにもなかったですよ。突き蹴りがあるので少林寺拳法に入りましたけどね。タイミングの問題なんですかね。その時極真があったら入ってるわけじゃないですか。
木村
東京の方だと生徒が道場に入りきれないくらい集まって……、ちょっとしごいて辞めさせちゃえ、みたいな感じだったらしいですよ。だから残っている人は根性あるし余計強かった。
川保
木村さんは少年時代、闘うとかそういうものに興味があったんですか?
木村
ありますよ、そりゃあ。ウルトラマン世代ですから。僕は格闘技始めたのは遅いんだけど、喧嘩はしてたんだよね。弱いまんま(笑)。虐める奴とかと弱いのに喧嘩してた。
川保
それは負けるんですか? 勝つんですか?
木村
負ける(笑)。だからいつか格闘技やりたいなと思ってた(笑)。
川保
その時に勝ってしまったら「こんなもんだ」って思う部分があるからやってないかもしれないですよね。
木村
向こうも勝てると思うから虐めるわけでしょ。でも、虐められたけど相手の腕折っちゃったりとか(笑)。これ書かないで。
川保
………いや~、木村さん怒らせたら相当怖そうですけど。おまけに、今、柔術やってるから(笑)。柔術って最後のところで強いじゃないですか、一対一だと。
木村
結局ね、やっぱりルールに守られてるから全部が使えるわけじゃないんだけど、ゲームとしても面白いんだよ。僕自身は強くはないけれど楽しい。柔術を始めて最初の半年ぐらいはやられてばっかり。初めて勝ったのは入ったばかりの初心者の人(笑)。
川保
空手とキックって練習体系違いますよね。キックはミット持ってくれる人がいたり、教えてくれる人がいたり。空手は集団で稽古する事が多いじゃないですか。そこについて行けないって人もいるんですよね。自分のペースでやりたいって人多いですよね。
木村
性に合う、合わないっていうのはあるでしょうね。負けるのがどうしても嫌って人はなかなか続かない。それでも面白味を見いだせるかどうかだと思います。
川保
そういう心というか、負けたり悔しいと思って奮起して次に向けて頑張るっていう精神も『空手バカ一代』や大山館長の本でいっぱい書かれてるんですけど、挫折したりすることの重要性はこの流れで学びましたけどね。黒崎先生の本とか。
木村
すごい感化されてるね(笑)。
川保
はい~。無茶苦茶感化されてますよ。本が好きなんで。漫画はもっと視覚的にショック受けますしね。
木村
闘うということについて言えば格闘技そのものより、ウルトラマンが最初にあったわけです。闘うべき時があったら闘うのがヒーローじゃないですか。そこで陰で策を弄してっていうのはどちらかというと悪役の方で。闘うのはヒーローの条件です。だから、それを習得したいと思うのは自然なことだと思いますね。でも格闘技って怖いイメージもあるから誰もが迷わず始めるというものでもないでしょう。実際に攻撃もらうと痛みとかあるし。
川保
痛いのは痛いなと思いますけどね。でもロー・キックとかでダメージ残るじゃないですか。アレは嬉しかったですね。「足引きずりながら歩く俺」っていうところにちょっとしたナルシズムを感じる部分があるんですよね。
木村
空手の人はそういう人多いよ(笑)。怪我自慢みたいな。「俺なんかもっとひどいことになったよ」みたいな(笑)。両足駄目になったとか(笑)。
川保
私の時代はフルコンタクト空手が競技化されてて、その選手権を獲得するっていう目標が大前提で、自分も試合に向けての稽古しかしてなかった。
木村
競技があるからスパーリングもできるしね。ある程度、何かルールがないと練習できないじゃないですか。
川保
極真も全日本空手道選手権大会やる前、大山空手道場時代は試合っていうのはないわけですよね。でも相当な稽古やってるわけですよ。金的とか、タオル巻いて顔殴ったり。
木村
それでもその場でのルールはあったと思うけどね。
川保
あの時は選手権がないから、純粋に強くなろうと思ってるわけですよね、みんな。試合の駆け引きとかじゃなくて、自分自身が技を習得したいし、強くなりたいっていう部分しかなかったんじゃないですか?
木村
使う技も違いますしね。試合前提だと金的蹴りはあまり練習しないもんね。
川保
その当時は試す場所が試合じゃなくて町の喧嘩とかになるんですかね。もっと喧嘩とかに大らかな時代だったんですかね。
木村
試行錯誤しながらやってたんだと思いますけどね。僕は打ち合うルールがあるって大事だと思うし、大山道場は強くなるシステムが出来ていたんだと思います。
川保
私はどっちかというと、柔道とか勝敗つくような武道から入ってきて、この前、大道塾の昇段審査で、20年ぶりぐらいに本気で打ち合ったんですけど、負けますわ、若いやつには(笑)。スピード追いつけないし、技が見えないんですよ。
木村
僕も、元旦に山木ジムで同門だった港太郎のジムに行って、2年ぶりくらいで、キックのマススパーリングをしたんだけど、最初の1ラウンドは全然見えなかった。しばらくやってないと見えなくなる。3ラウンドぐらいしたら段々見えてきたけど。
『格闘マンガで強くなる』
発行元 アスペクト 発売日1997年10月
木村氏編集のムック。漫画と現実の境目とは何か?
漫画が現実の世界に与えた影響を探る。
川保
試合を観戦する目もそうですよね。試合初めて観た時って何やってるか全然わからなかったんですよ。でも、ある程度ずっと観てたら目が慣れてきた。
木村
取材で観るのもそうですね。久しぶりに組み手やって見えないってそんな不思議じゃない。ただ、昔あれだけやってたわけだから、しばらく稽古したら元に戻るはず。でも現役で練習量多い人のスピードにはついて行けない。
川保
その時に老いというか……。「若い奴に付き合って殴り合うんじゃなくて、もっと勝つ方法を探さないと自分的には面白くないぞ」という部分があるじゃないですか。大道塾のルールはそれが出来るんじゃないかなって最近思い始めました。引っ掛けて、崩して、投げるとか。柔道的な投げじゃない技も可能なんで今後研究する価値があるなと。そういう武術的な技を活かすということで。
一対一の闘いと集団の闘いの意味
木村
格闘技について最近よく考えるんだけど、一対一の闘いって、群れの中の順位を決めるような闘いですよね。そこで片方が武器持って叩きのめしたからといって順位が上がるような事はないわけですよ。そういう時は同じ条件でやらないと周りが認めないみたいなところがあるから、割りと本能に根ざした闘いだと思うんですよね。
川保
なるほど。それとは別次元かもしれないんですが集団の闘いというのがありますよね。私は前から集団で闘うという事に興味があって。それはつまり戦争じゃないですか。戦争っていっても究極はミサイルの打ち合いかもしれないけど………。なので、サバイバルゲームを一回やってみたかったんですよ。「兵隊ってやっぱり白兵戦を想定しているから格闘技とかやってるんだろうな」って妄想の中で思ってたんです。そういうのを試したいなというのがあって知り合いに連れて行ってもらったんですよ。それで、始まった瞬間にワーって行くんですけど。10秒ぐらいで俺、頭打ち抜かれて。「ヒット!」死んだんですね。
木村
今は近接戦闘って言うんですよね。白兵というのは刀剣のことでしょ。しかし、近接戦闘は基本的に銃によるものです。ナイフなどを使うのは、所謂、サイレントキリング。
川保
特殊部隊が潜入してそういう技術は使うかもしれないですけどね。それに気付いて、戦争を銃とかでやる限り格闘技の有効性に疑問持ち始めたんですね。格闘技は体がデカければデカいほど有利って言われてるけど、戦場では俊敏に動ける方がいいし、あと、いい銃を持ってるとか(笑)、そういうことになってくるんですよね。
木村
所謂、本能に根ざした集団内で順位を決めるような闘い、例えば相撲を取るとか、レスリングで力比べするとか、そういう意味合いの戦いとは全く違うんですよ。白兵戦が最も有効だったって時代は歴史の中でもそんなにない。侍の戦いでも、銃がある前は弓矢があるし、鉄砲が入ったら鉄砲が主流だし。むしろ、剣術なんか盛んだったのは太平の江戸時代ですよね。競技化は完全にされてないけど、江戸時代という太平の中で柔術や剣術が熟成されたんですよ。人の生きる道、たしなみとして。現実の戦争ではそれだけじゃ駄目ということです。
川保
それは僕もショックでしたね。闘うぞって意気込みとかは負けないですけど、結局、10秒後には頭打ち抜かれて(笑)、死んでる。
木村
戦争の中の格闘技だと、第一次世界大戦の塹壕戦で有効だったのはスコップ。林悦道先生みたいな話で(笑)。スコップがとても有効でロシアではスコップ術を結構研究してたみたい。
川保
ちょっとカッコ悪いというか(笑)。日本兵って三八式に長い銃剣装着して槍持ってるみたいな感じですよね。やっぱり戦国時代の影響が残ってるんですかね。
木村
結局、弾が無いんだよね。石原莞爾の著作で読んだのだけど、日露戦争では本当に弾がなくて、補給が来たと思ったら一日パンパンと撃ったらもう無くなって、しょうがないから突っ込め、みたいなことだったらしい。そこで精神主義みたいな「弾が無くても精神でやっつけるんだ!」とか無茶苦茶なこと(笑)。だから負けたんです。合理主義でやったアメリカが勝ったでしょ。
川保
ああいう戦闘って合理主義じゃないと勝てないですもんね。
木村
勝てないです。アメリカでは工業製品が標準化されてたわけです、同じ種類の銃の部品ならそのまま他の中にも使える。太平戦争の時点で銃弾も統一されていた。日本では同じ20ミリの弾でも陸軍と海軍では違うのを使ってたり、標準化するという発想自体が無かった。アメリカだったら陸軍機でも海軍機でも全部12.7ミリだから陸軍機が海軍のものを流用できた。でも日本は全部違う。戦争は格闘技とはまたちょっと違うけれど、闘いですよ。きわめて合理的なマネージメントの元に行うべきものです。
川保
今回の本は格闘技雑誌でも武道雑誌でもなくて広い意味で闘う事がテーマなので、ミリタリー入ってくるんですよ。それを含めた上で闘うということを体現しようというマガジンなんですよ。『空手バカ一代』からミリタリーまで全部。
木村
僕もミリタリーに興味がある。ウルトラマン直撃世代のせいか、垂直離着陸機が好き。もう退役したけどSR-71というマッハ3以上で飛ぶ偵察機も好きだったな。話していて、小さい頃に見たヒーローものの影響がいまだにあるのにあらためて気がついた(笑)。